ノロウイルスの感染症
ノロウイルスの感染症
ノロウイルスはヒトに経口感染して、伝染性の消化器感染症を起こす。死に至る重篤な例はまれであるが、治療法は確立されていない。
ノロウイルスの症状
ノロウイルスを含む食品などを摂取した後1-2日の潜伏期間を経て、急性胃腸炎の症状が現れる。この潜伏期間は、他の細菌性の感染型食中毒に比べると短い部類にあたる。
多くの場合、嘔吐、下痢、腹痛が見られ、微熱を伴うこともある。症状の始まりは突発的に起こることが多く、夜に床についていたら突然腹の底からこみ上げてくるような感触がきて吐き気を催し、吐いてしまうことが多い。
しかもそれが一度で終わらず何度も激しい吐き気が起ったり吐いたりして、吐くためにトイレの便器のそばを離れられないといったことも起きる。しかも、無理に横になろうとしても気持ち悪くて横になれず、吐き気が治まった後は、急激且つ激しい悪寒が続き、さらに発熱を伴うこともある。
これらの症状は通常、1、2日で治癒し、後遺症が残ることもない。ただし免疫力の低下した老人では、死亡した例も報告されている。
また感染しても発症しないまま終わる場合(不顕性感染)や、風邪と同様の症状が現れるのみの場合もある。よく、「嘔吐、下痢、腹痛を伴う風邪」という表現があるが、それはノロウイルスによる感染症である可能性が高く(エンテロウイルス等の他の原因もある)、風邪ではない可能性が高い。ただし、これらの人でもノロウイルスによる感染は成立しており、糞便中にはウイルス粒子が排出されている。
ノロウイルスの感染経路
ノロウイルスによる感染症は、その感染経路から
1. 食中毒:ウイルスを蓄積したカキなどの生食およびウイルスで汚染された食品を喫食して経口感染するもの
2. 感染性胃腸炎:1によって感染した患者(あるいは1から2を経て感染した患者)の糞便や嘔吐物に排出されたウイルスから経口感染するもの
の二つに分けられることがある。販売あるいは調理提供する食品そのものの衛生管理の(食品衛生学的な)立場からは1のケースが特に問題とされるが、医学上は1と2のケースに明確な違いはない。
ノロウイルスの感染型食中毒
ノロウイルスによる食中毒は、カキやアサリ、シジミなどの二枚貝によるものが最も多いと言われている。日本では主として秋から冬場に発症する例が多いが、これは、カキを生食する機会が冬場が多いからではないかと考えられている。
ノロウイルスは貝類自体には感染しないと考えられている。すなわち、これらの貝の体内でノロウイルスが直接に増殖することはないとされる。しかしこれらの貝では消化器官、特に食物の細胞内消化を行う中腸腺に、生物濃縮によって海水中から濾過摂食されたノロウイルスが蓄積することが知られており、このことが食中毒の原因だと考えられている。
ノロウイルスの伝染性胃腸炎
2のケースの感染は糞口感染とも呼ばれる。ノロウイルスはヒトの腸壁細胞に感染して増殖し、新しく複製したウイルス粒子が腸管内に放出される。ウイルス粒子は感染者の糞便と共に排出されるほか、嘔吐がある場合は胃にわずかに逆流した腸管内容物とともに、嘔吐物にも排出される。糞便や嘔吐物がごくわずかに混入した飲食物を摂取したり、汚物を処理したときに少数のウイルス粒子が手指や衣服、器物などに付着し、そこから食品などを介して再び経口的に感染する。
またノロウイルスの場合、少数のウイルスが侵入しただけでも感染・発病が成立すると考えられており、わずかな糞便や嘔吐物が乾燥した中に含まれているウイルス粒子が空気を介して(空気感染で)経口感染することもあると考えられている。
ノロウイルスに発病した人はもちろん、不顕性感染に終わったり胃腸症状が現れなかった人でも、無症候性キャリアとして感染源になる場合があり、食品取り扱い時には十分な注意が必要である。